母乳育児を選ぶメリットとは

母乳は「最良の食品」として世界保健機関(WHO)も推奨する赤ちゃんの栄養源です。

免疫物質を含む初乳から始まり、赤ちゃんの成長とともに成分が変化していくのが母乳の特徴です。

母乳育児のメリット

赤ちゃんへのメリットとして特に重要なのが免疫機能の強化です。

母乳には分泌型IgAという抗体が豊富に含まれており、腸管の感染防御に働きます。

また、DHA・アラキドン酸などの多価不飽和脂肪酸が豊富で、脳や神経の発達を促すことも研究で示されています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが低下するという報告も多く、完全母乳を2ヶ月以上続けた場合にSIDS発症率が約半分になるというデータもあります。

お母さんへのメリットも見逃せません。

授乳時に分泌されるオキシトシンは子宮収縮を促し、産後の回復を助けます。

さらに、授乳期間が長いほど乳がんや卵巣がんのリスクが低下することが複数の研究で確認されています。

カロリー消費も1日約300〜500kcal増加するため、産後の体重管理にも有利に働きます。

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正しいラッチオン(くわえさせ方)の習得

母乳育児で最初につまずくポイントがラッチオン(正しいくわえさせ方)です。

浅飲みになると乳首痛の原因になるだけでなく、母乳の分泌量も減ってしまいます。

正しい抱き方・ラッチオン

正しいラッチオンの確認ポイントは「赤ちゃんの口が大きく開いており、乳輪の大部分を含んでいること」です。

乳首だけをくわえている状態(浅飲み)では、哺乳効率が低くなり、乳首に過大な圧力がかかって痛みや亀裂の原因になります。

飲んでいる間に赤ちゃんの顎がしっかり動いており、ゴクゴクという嚥下音が聞こえれば、上手に飲めているサインです。

抱き方は横抱き・フットボール抱き・添い乳の3種類が基本です。

帝王切開後でお腹に傷がある場合はフットボール抱きが楽です。

夜間授乳では添い乳も便利ですが、窒息リスクを避けるため、授乳後は赤ちゃんをあお向けに寝かせることが大切です。

月齢別の授乳スケジュール目安

月齢別授乳スケジュール

新生児期(0〜1ヶ月)は胃の容量が非常に小さく(初日は約5ml!)、1回の哺乳量は少量です。

この時期は「需要主導型」で欲しがるたびに与えるのが基本で、1日10〜12回の授乳になることも珍しくありません。

頻回授乳が母乳分泌を確立するために重要です。

生後3ヶ月頃になると哺乳量が増え、授乳間隔が2〜3時間に整ってきます。

生後3〜4ヶ月は「乳腺発達ピーク」を過ぎて乳房の張り感が落ち着く時期で、「母乳が減ったのでは」と誤解しやすいですが、実際には需要と供給のバランスが取れてきた証拠です。

生後6ヶ月頃から離乳食が始まります。

離乳食後にも授乳を続けることが重要で、1歳頃までは母乳(またはミルク)が主要な栄養源です。

WHOは2歳まで母乳育児を続けることを推奨していますが、卒乳のタイミングはそれぞれの親子の状況で決めて構いません。

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授乳トラブルとその対処法

授乳トラブルと対処法

母乳育児で最もよくあるトラブルが「乳首の痛み」「乳腺炎」「母乳不足感」の3つです。

それぞれの対処法を知っておくことで、多くの場合は継続できます。

乳首の痛み・亀裂:浅飲みが主な原因です。

ラッチオンを見直すことが根本的な解決策です。

授乳後は乳首に少量の母乳を塗って乾かすだけでも保護効果があります。

ラノリンクリームやニップルシールドも痛みの軽減に効果的です。

亀裂から感染し化膿している場合は産婦人科か助産師外来を受診してください。

乳腺炎:乳管が詰まった状態(うっ滞性乳腺炎)や細菌感染が起きた状態(化膿性乳腺炎)があります。

発熱(38度以上)・乳房の硬結・赤みを伴う場合は早急に受診が必要です。

初期のうっ滞性乳腺炎なら授乳を続けながら休養と水分補給で回復することが多いです。

やめてしまうと症状が悪化することがあるため、授乳継続が原則です。

母乳不足感:「足りていないのでは」という不安は多くのお母さんが感じますが、赤ちゃんが1日6回以上排尿し体重が増加していれば、実際には足りている可能性が高いです。

分泌量を増やすには頻回授乳・夜間授乳の継続が有効です。

ストレスや疲労も母乳分泌を妨げるため、家族のサポートを得て休息を確保することが大切です。

母乳と薬・食事・アルコールの関係

授乳中の食事は基本的に何でも食べて構いませんが、いくつか注意が必要なものがあります。

アルコールは母乳に移行します。

飲酒後2〜3時間は授乳を避けるか、飲酒前に搾乳しておくのが安全です。

カフェインも移行しますが、コーヒー1〜2杯程度では問題ないとされています(新生児期は代謝が遅いためより注意が必要)。

薬については、多くの一般的な薬は授乳中も使用可能ですが、必ず医師・薬剤師に授乳中であることを告げてください。

授乳中に安全とされる薬は多く、痛み止め(アセトアミノフェン)や一部の抗生物質なども使用できます。

「LactMed」というNIHのデータベースでも安全性情報を確認できます。

職場復帰後の母乳育児継続

職場復帰後も母乳育児を続ける場合、搾乳が鍵になります。

電動搾乳機を使い、職場で搾乳した母乳は冷蔵保存(24時間以内)または冷凍保存(最大6ヶ月)が可能です。

保育所入所後は直接授乳の回数が減りますが、朝・帰宅後・就寝前の授乳を続けることで分泌を維持できます。

職場で搾乳する時間と場所の確保については、育児・介護休業法により企業側に配慮義務があります。

卒乳・断乳の進め方

卒乳・断乳の進め方

卒乳(自然にやめる)と断乳(計画的にやめる)は異なるアプローチです。

どちらが正解というわけではなく、家族の状況や子どもの様子に合わせて選択できます。

断乳を行う場合は、急にやめると乳腺炎になりやすいため、2〜4週間かけて徐々に授乳回数を減らしていく「段階的断乳」が安全です。

張りが強い時は少量搾乳して圧を逃がしますが、全部搾ってしまうと分泌が維持されてしまうため「張りが楽になる程度」にとどめます。

よくある質問(FAQ)

母乳が足りているか判断する方法は?

最も信頼性が高い指標は体重増加です。

生後3〜4ヶ月は1日25〜30g以上の増加が目安です。

排尿回数も重要な指標で、1日6回以上(淡黄色の尿)であれば水分補給は十分です。

乳房の張り感はあくまで参考程度で、3ヶ月以降は張らなくなっても足りていることがほとんどです。

新型コロナウイルス感染時も授乳してよいですか?

現在の見解では、COVID-19感染中も適切なマスク・手洗い対策をした上で授乳を続けることができるとされています。

母乳には感染を防ぐ抗体が含まれるため、授乳継続のメリットが上回るとされています(WHO・厚生労働省の見解)。

ただし状態が重篤な場合は搾乳して別の人に授乳してもらうことも検討してください。

完全母乳か混合かどう決めればいいですか?

完全母乳が難しいケース(赤ちゃんの体重増加不良・母の病気・乳房の問題など)では混合授乳や完全ミルクも選択肢です。

大切なのは「母乳にこだわってお母さんや赤ちゃんが苦しくなること」よりも、心身ともに健康で育てられることです。

混合でも母乳のメリットは得られます。